プログラムノート

第96回 2025年12月7日(日)『南北アメリカ』

バークレイズ証券株式会社 特別協賛
東京交響楽団&サントリーホール

「こども定期演奏会」
音楽世界めぐり
第96回 「南北アメリカ」
2025年12月7日(日)11:00開演
サントリーホール 大ホール

「こども定期演奏会 2025」テーマ曲(和田 薫 編曲)
柴崎日花里:『1分間の夢旅行』
Hikari Shibasaki (arr. Kaoru Wada): Theme Music of “Subscription Concert for Children”

コープランド:『市民のためのファンファーレ』
Aaron Copland: Fanfare for the Common Man

レブエルタス:『センセマヤ』
Silvestre Revueltas: Sensemayá

ピアソラ:『オブリビオン(忘却)』
Astor Piazzolla: Oblivion

新曲チャレンジ・プロジェクト(こどものモチーフによる若手作曲家作品)
上田素生:『旅するソナチネ』
Motoki Ueda: Traveling Sonatine

バーンスタイン:『オン・ザ・タウン:3つのダンス・エピソード』より 第3番「タイムズ・スクエア:1944」
Leonard Bernstein: No. 3 “Times Square: 1944” from On the Town: 3 Dance Episodes

ヒナステラ:バレエ組曲『エスタンシア』作品8a より 第4曲「終幕の踊り(マランボ)」*
Alberto Ginastera: No. 4 “Danza final (Malambo)” from Estancia Suite, Op. 8a

J. ウィリアムズ:映画『スター・ウォーズ エピソード5:帝国の逆襲』より「帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)」*
John Williams: “The Imperial March (Darth Vader’s Theme)”
from Star Wars: Episode V : The Empire Strikes Back

こども奏者 *

【第1ヴァイオリン】
内田彩稀(小学3年生)、寒竹紗梛(小学4年生)、黒金楓花(小学6年生)、平尾晃寛(中学2年生)、パカフォン ジッチャイプーム(14歳)、福地りべか(中学3年生)
【第2ヴァイオリン】
家入彩寧(小学2年生)、ヤダパット スクマック(10歳)、小島杏紗(小学4年生)、竹口詠夢(小学4年生)、塩田琴葉(中学2年生)、カスカレッラ メロディー(中学2年生)、
ダヌパット チェッタイソン(14歳)
【チェロ】
川村 光(小学6年生)、マヴロノヴ健太(中学2年生)、グラッツィーニ ダリオ 曽根(中学2年生)、川村未来(中学3年生)
【フルート】
髙橋 汀(中学1年生)、礪波貴和(中学1年生)、笠原菜々美(中学2年生)
【オーボエ】
安藤美沙紀(中学2年生)
【クラリネット】
安藤麻奈美(小学5年生)
【トランペット】
山手夕聖(中学1年生) 
【トロンボーン】
赤峯ももな(中学2年生)

指揮:原田慶太楼
Keitaro Harada, Conductor

東京交響楽団
Tokyo Symphony Orchestra

司会:坪井直樹(テレビ朝日アナウンサー)
Naoki Tsuboi, MC (Announcer of TV Asahi)


プログラム・ノート
「こども定期演奏会 2025」テーマ曲
柴崎日花里:『1分間の夢旅行』


柴崎日花里さん(中学1年生)からのコメント
 1分間の夢旅行は、夜、私がふとんに入った時、夢の中で旅行ができたらいいなと思っていたらひらめいた曲です。私なら旅行の行き先はビッグベンがあるロンドンを思い浮かべます。他にも空想の世界を旅してもいいし、おしゃれなホテルで本を読んでもいいしどんなイメージでもいいのです。自由に自分だけの夢旅行を想像しながら聴いてくださったら嬉しいです。
 そしてこの曲を作る時に支えてくださった先生方、ありがとうございました!そろそろ出発のお時間となったようです。それでは皆様、1分間の夢旅行に、行ってらっしゃい!

飯田有抄(クラシック音楽ファシリテーター)

今年のこども定期演奏会のテーマは「音楽世界めぐり」です。今日は、「南北アメリカ」の楽しいオーケストラ音楽をお届けします。

コープランド:
『市民のためのファンファーレ』

 「ファンファーレ」とは、特別な行事の始まりを知らせる音楽です。トランペットやホルンなどの金管楽器が高らかに響き、華やかな雰囲気を作ります。ときには戦争で軍隊の気分を高めるために使われることもありましたが、この『市民のためのファンファーレ』は、兵士ではなく「市民」のために、アメリカの作曲家アーロン・コープランド(1900~90)が作曲しました。第二次世界大戦中に書かれ、平和への希望が込められています。打楽器の力強い響きで始まり、金管楽器が堂々としたハーモニーを奏でます。

レブエルタス:
『センセマヤ』

 こんどは中央アメリカの国メキシコの作曲家、シルベストレ・レブエルタス(1899~1940)の『センセマヤ』です。キューバの詩人ニコラス・ギジェン(1902~89)の詩の朗読を聞いたレブエルタスが、その力強いリズムにすっかり魅了されて作曲しました。詩の最初には「マヨンベ・ボンベ・マヨンベ!」という呪文のような言葉があり、その響きをヒントに曲のメロディーが作られました。
 「センセマヤ」は「蛇殺しの歌」という意味です。カリブ海では昔、蛇は豊かさの象徴でした。その蛇を神様への生けにえとして捧げる古い儀式を、オーケストラの音楽によって描いています。低い音の不気味なリズムで始まり、くねくねと動く蛇を思わせるメロディーが響きます。クラベス(拍子木)、マラカス、ギロ、トムトム、木琴などさまざまな打楽器が、怪しくリズミカルな音楽を盛り上げます。

ピアソラ:
『オブリビオン(忘却)』

 南アメリカの国アルゼンチンで生まれたアストル・ピアソラ(1921~92)は、小さな頃からバンドネオン(アコーディオンの仲間)が得意で、楽団のリーダーとして活躍しました。フランスでクラシック音楽を学び、アルゼンチンの舞曲タンゴの要素を取り入れて、750曲以上もの作品を残しています。
 「オブリビオン」とは、英語で「忘却」という意味です。何かを忘れてしまうという、少し悲しい感じの言葉です。そのタイトルどおり、音楽も寂しい雰囲気をたたえています。1982年に作曲され、2年後にイタリア映画『エンリコ4世』で使われて有名になりました。今では世界中で、いろいろな楽器で演奏されています。

バーンスタイン:
『オン・ザ・タウン:3つのダンス・エピソード』より
第3番「タイムズ・スクエア:1944」

「タイムズ・スクエア」はアメリカ合衆国の大都会ニューヨークの真ん中にあるとても賑やかな一角です。高いビルに囲まれ、ミュージカル劇場がいくつも並び、さまざまなお店の看板が夜でもカラフルに輝きます。なぜそこが「タイムズ・スクエア」と呼ばれるかというと、20世紀の初めに有名な新聞社「ニューヨーク・タイムズ」の本社が建って発展したからです。以来、人々の憧れの地となりました。
 この曲は、アメリカの作曲家・指揮者レナード・バーンスタイン(1918~90)が1944年に作ったミュージカル『オン・ザ・タウン』の中から、演奏会のためにまとめられた3曲の中の1つです。バーンスタインは、クラシック音楽だけでなくミュージカルやジャズの要素を取り入れた作風で知られます。また、今日の1曲目に登場したコープランドを「自分にとっての作曲の先生」としたっていました。
 ミュージカル『オン・ザ・タウン』は、第二次世界大戦中に3人の水兵がニューヨークで休日を過ごし、お酒を飲んだり踊ったり、恋をしたりするお話です。「タイムズ・スクエア:1944」は、水兵隊たちがタイムズ・スクエアの夜を楽しむ場面の音楽です。軽快でおしゃれなクラリネットの独奏や、トロンボーンやトランペットのユーモラスなサウンド、打楽器のリズミカルな響きが、街の活気を生き生きと表現します。

ヒナステラ:
バレエ組曲『エスタンシア』作品8a より
第4曲「終幕の踊り(マランボ)」

 アルベルト・ヒナステラ(1916~83)も、ピアソラと同じくアルゼンチンを代表する作曲家です。1941年に作られたバレエ『エスタンシア』は、都会育ちの青年が、アルゼンチンのカウボーイたちと民族的なダンスで競争し、見事に勝利して、牧場主の娘と結ばれるというストーリー。「終幕の踊り(マランボ)」は、その競争のシーンの音楽です。ヒナステラは、17世紀ごろからアルゼンチンに伝わる「マランボ」という古い民族舞踊の音楽を取り入れました。男性だけが踊る力強いダンスで、曲の中にはアクセントや、裏拍を強調するようなシンコペーション・リズムが特徴的に使われ、踊り手の激しいステップや、それを応援する人たちの声援などが表現されます。聴いているだけで踊り出したくなるような一曲です。

J. ウィリアムズ:
映画『スター・ウォーズ エピソード5:帝国の逆襲』より
「帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)」

 アメリカの映画『スター・ウォーズ』シリーズは、1977年に第1作が作られた大人気の作品です。悪役の銀河帝国と、それと戦う反乱軍の宇宙戦争が描かれます。主人公のルーク・スカイウォーカーたちが「フォース」という不思議な力を学びながら成長していく冒険物語が、世界中の人々を感動させました。その音楽を作曲したのが、ジョン・ウィリアムズ(1932~ )です。彼は『ジョーズ』『E. T. 』『ハリー・ポッター』など数々の映画音楽でも知られています。オーケストラを巧みに扱い、登場人物ごとにテーマを与える “ライトモティーフ” という手法で、映画の重要な場面を音で表現しました。
 「帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)」は、特に有名な曲です。暗いハーモニーと、行進曲のリズムに乗って、トランペットやトロンボーンなどの金管楽器が高らかにメロディーを奏で、帝国軍の強さを表現します。映画の中でこの曲がかかると、怖いダース・ベイダーが登場するぞ!と思わず緊張してしまう、そんな迫力のある音楽です。


コラム
グルメ世界めぐり~アルゼンチンのおいしい料理

アルゼンチン地図 今日のコンサートには、南アメリカの国アルゼンチンが生んだ2人の作曲家、ピアソラとヒナステラが登場しました。ここでは彼らの国のおいしい料理をご紹介しましょう。
 アルゼンチンは、世界でも有名な「お肉のおいしい国」です。広々とした草原で育った牛のお肉を使った料理がたくさんあって、中でも特に知られているのが「アサード」。これはアルゼンチン風のバーベキューで、大きな鉄の網で牛肉や豚肉を炭火でじっくり焼いて食べます。家族やお友だちが集まり、みんなで時間をかけて楽しく食べるのは、アルゼンチンの伝統的な食事のスタイルです。


 日本でも見かけるようになった「エンパナーダ」は、小麦粉の皮でお肉やチーズ、野菜を包んで焼いた、手のひらサイズのパイです。ギョーザみたいな形をしています。家庭や地域によって中身が変わるところも、この料理のおもしろいところです。
ミラネッサ
 もう一つ、日本人にも食べやすいのが「ミラネッサ」。うすくのばした牛肉や鶏肉にパン粉をつけて揚げた料理で、見た目も味もとんかつによく似ています。サクサクでジューシーな味わいで、パンにはさんだ「ミラネッサ・サンド」は子どもたちに大人気です。
 食事のあとには「ドゥルセ・デ・レチェ」というキャラメルソースがおすすめ。牛乳と砂糖をコトコト煮つめて作る、とろ~りとした甘さのソースです。パンケーキやアイスクリームにかけると、さらにおいしくなりますよ。



(文 飯田有抄)