プログラムノート

第88回 2023年12月10日(日)『 黒&白』

バークレイズ証券株式会社 特別協賛
東京交響楽団&サントリーホール

「こども定期演奏会」
音楽の色いろ
第88回 黒&白
2023年12月10日(日)11:00開演
サントリーホール 大ホール

ご挨拶 バークレイズ証券株式会社 代表取締役社長 木曽健太郎

「こども定期演奏会 2023」テーマ曲(上田素生 編曲)
石川真子:『音楽の色いろ』
Mako Ishikawa (arr. Motoki Ueda): Theme Music of “Subscription Concert for Children”

チャイコフスキー:バレエ音楽『白鳥の湖』作品20 より「4羽の白鳥の踊り」
Pyotr Ilyich Tchaikovsky: “Dance of the Little Four Swans” from Swan Lake, Op. 20

新曲チャレンジ・プロジェクト(こどものモチーフによる若手作曲家作品)
山本菜摘:『トレイン大集合!』
Natsumi Yamamoto: TRAIN PARTY!

チャイコフスキー/エリントン&ストレイホーン 編曲:バレエ組曲『くるみ割り人形』より
「小序曲」「金平糖の精の踊り」「ロシアの踊り(トレパーク)」「花のワルツ」「行進曲」
Pyotr Ilyich Tchaikovsky (arr. Duke Ellington & Billy Strayhorn):
“Miniature Overture,” “Dance of the Fairy Dragée,” “Russian Dance (Trepak),”
“Waltz of the Flowers” and “March” from The Nutcracker Suite
※「ロシアの踊り(トレパーク)」と、「花のワルツ」の冒頭部分は、チャイコフスキーによる原曲版で演奏いたします。

チャイコフスキー:バレエ音楽『白鳥の湖』作品20 より「終曲」*
Pyotr Ilyich Tchaikovsky: “Finale” from Swan Lake, Op. 20


こども奏者*
第1ヴァイオリン:
宮之原海織(小学3年生)、西岡美琴(小学4年生)、安島風英(小学5年生)、
後藤敬太(小学5年生)、山下花音(小学5年生)、秋濱香里子(中学2年生)、
竹内美咲(中学2年生)

第2ヴァイオリン:
秋山小雪(小学2年生)、木原理央奈(小学2年生)、高島由愛(小学2年生)、
道宗 葵(小学2年生)、藪﨑結衣(小学2年生)、角野泰佑(小学6年生)

ヴィオラ:
木村隼都(小学6年生)

チェロ:
倉田 律 (小学4年生)、重岡 凛 (小学4年生)、志水伶衣(小学5年生)

フルート:
髙橋 汀(小学5年生)、笹川ゆい(中学2年生)

クラリネット:
石田ひなた(中学3年生)

トロンボーン:
梁瀬莉央(中学1年生)、関 香乃花(中学2年生)

指揮:原田慶太楼
Keitaro Harada, Conductor

東京交響楽団
Tokyo Symphony Orchestra

司会:坪井直樹(テレビ朝日アナウンサー)
Naoki Tsuboi, MC (Announcer of TV Asahi)

新曲チャレンジ・プロジェクト


 「こども定期演奏会」では、20周年を迎えた2021年以降、子どもたちと音楽家を結ぶ新企画として、子どもの書いた短いメロディーを使った新曲を、若手作曲家から募集しています。23年の新曲のテーマは「乗り物」。力作が揃った中、原田慶太楼マエストロらによる審査の結果、山本菜摘さんの『トレイン大集合!』が選ばれました。
 この曲では、子どもたちが作曲した3つのメロディーから2つが使われています。山本さんのプログラム・ノートを参考に、どこにどのメロディーが使われているのか、ぜひ探してみてください!


池村佳奈(小学2年生)




加藤ひの(中学3年生)



※24年シーズンは、「新曲チャレンジ・プロジェクト」はお休みとなります。


プログラム・ノート
山本菜摘


 皆さん、はじめまして。作曲家の山本菜摘です。
 今年の新曲チャレンジ・プロジェクトのテーマは「乗り物」! 皆さんは「乗り物」と聞いて何が思い浮かびますか。自動車? 自転車? 一輪車? それとも…バス? トラック? ブルドーザー? パトカーに潜水艦、人力車や宇宙船もありますね!
 私は、今回選んだ2つのメロディーから「トレイン(電車)」をイメージしました!
 佳奈さんのメロディーは5拍子のリズムで、次にどこに進むのか予測できない音の進行がとてもユニーク。ひのさんのメロディーは優雅で美しく、まるで舞踏会のようなエレガントさもあります。お二人のメロディーに「あちこちから個性も魅力もさまざまなトレイン達が集まってくる」イメージが重なりました。この曲の中で、2つのメロディーは姿を変えてたくさん登場します。どんなトレインが登場するでしょうか? どんな景色が見えるでしょうか?「リズム」や「音色」にもぜひ耳を澄ませてみてください!
 素敵なメロディーを作曲してくださった池村佳奈さん、加藤ひのさん、東京交響楽団とサントリーホールの皆様、多方面から支えてくださっている皆様、そして、このプロジェクトを立ち上げ熱くフォローし続けてくださった原田慶太楼さんに心より感謝申し上げます。
 「リズムに乗る」という言葉のとおり、「リズム」も一種の「乗り物」かもしれません。今日はこのホールにいる皆さんで、目には見えない、けれど、大きなリズムに乗って楽しい時間を過ごしましょう! それでは、出発進行!

作曲:山本菜摘
Natsumi Yamamoto, Composer

1998年12月、宮城県生まれの24歳。4歳からピアノを始めました。初めての作曲は5歳のとき、『つららの歌』という弾き語りの作品です。中学2年までは眼科医(目のお医者さん)になりたいと思っていましたが、「音楽療法」というものを知ってから「音楽で誰かを元気にできたら素敵だな、作曲家になりたいな」と思うようになりました。東京藝術大学作曲科で勉強中に、ピアノやオーケストラの楽器のほか、お箏や尺八など和楽器を演奏する人、歌、指揮、美術を勉強する人たちに出会い、素敵な友達がたくさんできました。今は、作曲・編曲のほか、即興演奏、絵やアニメとのコラボレーションもしています。好きな食べ物はお魚。美術館に行くこと、お散歩することが大好きです。

プログラム・ノート
「こども定期演奏会 2023」テーマ曲
石川真子:『音楽の色いろ』


石川真子さん(小学6年生)からのコメント

 この曲は、おいしいスイーツを食べた時に浮かんだフレーズを用いて作りました。ケーキの「スポンジがステージ」で、その上にのっている「フルーツたちがオーケストラ」のイメージです。様々な色のフルーツたちが音楽を奏でています!
 今年のテーマ「音楽の色いろ」のように、音楽の色々な記号や形、ハーモニーの色を最大限生かせるよう、意識しました。半音階やスケール、トリルやターンなどを取り入れ、和音の移り変わりも感じて作りました。「con grazia(優雅に、優美に)」ですが、どこか楽しい雰囲気もあるような、素敵な音楽の世界を表現してみました。
曲の中に、たくさんの色が散りばめられているので、ぜひ皆さんに、どんな色なのか想像しながら聴いてほしいです!

飯田有抄(クラシック音楽ファシリテーター)

 「音楽の色いろ」をテーマとした今年のこども定期演奏会も、今日が最終回です。テーマカラーは「黒&白」。チャイコフスキーのバレエ音楽や、こどもたちと若い作曲家が一緒に作った「新曲」をお楽しみください。

チャイコフスキー:
バレエ音楽『白鳥の湖』作品20 より「4羽の白鳥の踊り」


 バレエといえば、チュチュという白くてフワリとした衣装を身にまとうバレリーナの姿を思い浮かべる人は多いでしょう。彼女たちが可憐に舞うロマンティックなバレエは、「バレエ・ブラン」と呼ばれ、1830年ころからヨーロッパで大流行しました。「ブラン」とは、バレエが盛んな国フランスの言葉で「白」を意味します。
 ロシアの作曲家ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840~93)が音楽を手がけたバレエ『白鳥の湖』が、1877年に初めて上演されたころ、バレエ・ブランの美しく幻想的なステージは、すっかりおなじみの光景となっていました。悪魔によって白鳥の姿に変えられてしまった王女オデットと、王子ジークフリートとの永遠の愛を描いた『白鳥の湖』は、「3大バレエ・ブラン」の一つに数えられる人気作となりました(ちなみに、そのほかの2作は、『ラ・シルフィード』と『ジゼル』というバレエです)。
 「4羽の白鳥の踊り」という曲は、森の中の湖で王子が白鳥たちのダンスを眺めるシーンで登場します。4人の白いチュチュをまとったダンサーたちが手をとりながら、ぴったりと動きを合わせて踊る場面の曲で、ファゴットが奏でる弾むようなリズムが印象的な音楽です。

チャイコフスキー/エリントン&ストレイホーン 編曲:
バレエ組曲『くるみ割り人形』より
「小序曲」「金平糖の精の踊り」「ロシアの踊り(トレパーク)」
「花のワルツ」「行進曲」

 『くるみ割り人形』もチャイコフスキーが音楽を作ったバレエで、ドイツの作家E. T. A. ホフマンの童話『くるみ割り人形とねずみの王様』を題材にしています。物語はクリスマス・イブの夜。少女クララへクリスマスプレゼントとして贈られたくるみ割り人形が、夜になると王子に姿を変えます。そして二人がお菓子の国に行くと、妖精たちが次々にダンスを披露してくれます。そんな夢のような世界を描いたバレエの音楽を、のちにチャイコフスキーはコンサートでも演奏できるように8曲からなる組曲にまとめました。
 今日はその中から5曲を、特別なバージョンで聴いていただきましょう。アメリカのジャズ・ピアニストで作曲家のデューク・エリントン(1899~1974)、そしてジャズのスタンダードナンバー『A列車で行こう』の作曲家として知られるビリー・ストレイホーン(1915~67)が、1960年にジャズ・オーケストラのためにアレンジしたバージョンと、チャイコフスキー作曲の原曲との組み合わせでお届けします。ジャズとは、アフリカ出身の黒人とヨーロッパ出身の白人との文化がアメリカで出会って生まれた音楽です。『くるみ割り人形』がジャズらしい明るい響きとノリのいいリズムに彩られていきます。

チャイコフスキー:
バレエ音楽『白鳥の湖』作品20 より「終曲」

 おしまいは再び『白鳥の湖』から「終曲」です。白鳥の王女オデットに恋をした王子ですが、悪魔の罠にはめられて、黒いチュチュを着て踊る黒鳥オディールに心を奪われてしまいます。オデットは深く傷ついて湖に身を投げます。悪魔にだまされたと知った王子もオデットのあとを追って永遠の愛を誓います。そして二人の強い愛の力は、悪魔を滅ぼすのです(演出によっては、王子が悪魔を倒すバージョンもあります)。
 最後のシーンを表現する「終曲」は、『白鳥の湖』の中でもっとも有名なメロディーをオーケストラ全体が力強く演奏し、圧倒的な響きでクライマックスを盛り上げます。

コラム
音楽と色
その4 音に色を感じる「共感覚」

 みなさんは「共感覚」という言葉を聞いたことがありますか? たとえば、ある高さの音を聴くと、それと同時に、ある決まった色が見えるような感覚のことをいいます。ドの音を聴いたら赤、ファの音を聴いたらオレンジが見えたりする感覚です。でも、音を聴くのは耳、聴覚に関することですよね。色を見るのは目、視覚に関することです。つまり、聴覚と視覚とが共に結びついて働く感覚のことを、「共感覚」というのです。文字や数字や曜日(!)にも決まった色を感じる人がいるそうです。
 そんなの信じられない! という人はたくさんいると思います。ある研究によれば、共感覚を持つ人は、100人に1人とも、2000人に1人とも言われていて、とても少ないのです。科学でも共感覚についてはまだ分かっていないことも多いそうですが、この感覚は脳の中で起こっているようです。共感覚を持たない多くの人にとっては、なんだか神秘的なお話ですね。
 音楽家の中には、共感覚を持っていたと言われている人たちがいます。ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービン(1872~1915)はその一人。彼は特定の音にはっきりと色彩を感じたといいます。そんな彼は、交響曲第5番「プロメテウス:火の詩」(1910)という作品の中で、ハ長調を弾いたら赤、ニ長調を弾いたら黄色に光が出される鍵盤楽器「色光ピアノ」を使おうと試みました。残念ながら当時のテクノロジーでは、色光ピアノはうまく使えませんでした。その後、照明の色を使い、スクリャービンが出したかった色を映し出す試みもなされました。しかし、本当にスクリャービン自身が感じていた色を出せていたかどうかは誰にもわかりません。
 いずれにしても、音と色とがリアルに結びついて感じられる音楽家がいるというのは興味深いことです。共感覚を持たない多くの人も、音楽を聴きながら何色が感じられるかを想像してみるのもおもしろいかもしれません。

(文 飯田有抄)