プログラムノート

第87回 2023年9月3日(日)『 黄&金色』

バークレイズ証券株式会社 特別協賛
東京交響楽団&サントリーホール

2023年9月3日(日)11:00開演
サントリーホール 大ホール

「こども定期演奏会 2023」テーマ曲(上田素生 編曲):
石川真子:『音楽の色いろ』
Mako Ishikawa (arr. Motoki Ueda): Theme Music of “Subscription Concert for Children”

ヘンデル:『王宮の花火の音楽』HWV 351 より 序曲
George Frideric Handel: Overture from “Music for the Royal Fireworks,” HWV 351

ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68「田園」より 第1楽章
Ludwig van Beethoven: Symphony No. 6 in F Major, Op. 68, “Pastorale”
I. Allegro ma non troppo

ドビュッシー(ビュセール 編曲):『小組曲』より
Claude Debussy (arr. Henri Büsser): from Petite Suite

第1曲「小舟にて」 No. 1 “En bateau”
ピアノ連弾:平木佑磨(小学2年生)&小山実稚恵
Yuma Hiragi & Michie Koyama, Piano

第4曲「バレエ」 No. 4 “Ballet”
ピアノ連弾:猪俣柚音(中学1年生)&小山実稚恵
Yuzuno Inomata & Michie Koyama, Piano

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18 より 第3楽章
Sergei Rachmaninoff: Piano Concerto No. 2 in C Minor, Op. 18
III. Allegro scherzando


ピアノ:小山実稚恵
Michie Koyama, Piano

指揮:下野竜也
Tatsuya Shimono, Conductor

東京交響楽団
Tokyo Symphony Orchestra

司会:坪井直樹(テレビ朝日アナウンサー)
Naoki Tsuboi, MC (Announcer of TV Asahi)

プログラム・ノート
「こども定期演奏会 2023」テーマ曲
石川真子:『音楽の色いろ』


石川真子さん(小学6年生)からのコメント

 この曲は、おいしいスイーツを食べた時に浮かんだフレーズを用いて作りました。ケーキの「スポンジがステージ」で、その上にのっている「フルーツたちがオーケストラ」のイメージです。様々な色のフルーツたちが音楽を奏でています!
 今年のテーマ「音楽の色いろ」のように、音楽の色々な記号や形、ハーモニーの色を最大限生かせるよう、意識しました。半音階やスケール、トリルやターンなどを取り入れ、和音の移り変わりも感じて作りました。「con grazia(優雅に、優美に)」ですが、どこか楽しい雰囲気もあるような、素敵な音楽の世界を表現してみました。
 曲の中に、たくさんの色が散りばめられているので、ぜひ皆さんに、どんな色なのか想像しながら聴いてほしいです!

飯田有抄(クラシック音楽ファシリテーター)

 今年のこども定期演奏会は「音楽の色いろ」をテーマにお届けしています。本日は「黄&金色」がテーマカラーです。輝かしい響きのオーケストラ曲をお楽しみください。

ヘンデル:『王宮の花火の音楽』HWV 351 より 序曲

 この夏みなさんは花火大会に行ったり、手持ち花火で遊んだりしましたか? 花火を見て楽しむ風習は、日本では江戸時代、徳川家康(1543~1616)のころから始まったそうです。ヨーロッパでも、打ち上げ花火はやはり家康と同時代の16世紀にイングランドの王室ではやったそうです。
 1曲目の作曲者であるジョージ・フリデリック・ヘンデル(1685~1759)はドイツで生まれ、イングランドで活躍した作曲家です。家康よりも150年ほどあとの時代にはなりますが、そのころもやはり英国王室では華やかな場面で花火が用いられていたようです。
 1749年、戦争を終わらせる平和の祝典で、花火が打ち上げられることになりました。その際に、大編成の軍楽隊が輝かしい音楽を生演奏することになり、ヘンデルが『王宮の花火の音楽』という組曲を作りました。公開リハーサルでは多くのロンドン市民が詰めかけ、ロンドン橋が大渋滞になったそうです。
 のちにヘンデルは弦楽器のパートも加えたオーケストラ編成に組曲を仕立てました。5曲の組曲のうち、今日は花火の点火前に演奏された華やかな「序曲」を聴いていただきます。

ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68「田園」より 第1楽章

 緑あふれる散歩道で、小鳥たちが歌い、澄んだ小川が流れる――そうした気持ちのいい自然とのふれあいは、きっとみなさんも生活の中で経験していると思います。200年以上も前、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)もやはり、ドイツのハイリゲンシュタットという美しい田舎で、心休まる日々を過ごしていました。大都会のウィーンで音楽家として活躍しながらも、実は耳の病に心を痛めていたベートーヴェンに、お医者さんが緑の中でゆっくりと休むようにとアドバイスをしたのです。馬車で数時間も走れば、緑豊かでワインの美味しいハイリゲンシュタットに到着します。ベートーヴェンはたびたびハイリゲンシュタットを訪れては散歩をゆっくり楽しみ、自然の中で思いついたメロディーを五線紙に書き留めていたそうです。
 心も体も慰めてくれる自然への感謝は、やがて一つの交響曲となりました。それが1808年に完成した交響曲第6番です。初演のコンサートの新聞広告には、ベートーヴェン自身が「田舎の生活の思い出」という言葉を添えています。また、交響曲全体に「田園」というタイトルをつけ、5つの楽章それぞれにも、自然の情景にちなんだ言葉を添えました。交響曲にそうした題名をつけるのは当時としてはめずらしいことでした。
 今日は第1楽章「田舎についたときの愉快な感情の目覚め」を演奏します。心が浮き立つようなリズムと爽やかな響きにあふれた音楽です。

ドビュッシー(ビュセール 編曲):『小組曲』より 第1曲「小舟にて」、第4曲「バレエ」

 『小組曲』は、フランスの作曲家クロード・ドビュッシー(1862~1918)が、24歳から27歳にかけて作曲したピアノの連弾のための作品です。のちにフランスの指揮者であり作曲家のアンリ・ビュセール(1872~1973)という人がオーケストラ用に編曲しました。「小舟にて」「行列」「メヌエット」「バレエ」という全部で4つの小品でなりたっています。本日演奏される「小舟にて」というタイトルは、ヴェルレーヌという詩人がフランスの古き良き時代を描いた詩集『艶なる宴』から取られており、穏やかな波に揺られる小舟を思わせます。「バレエ」は快活なリズムと流れるようなメロディーが魅力的な作品です。今日は、ピアノ連弾とオーケストラによるスペシャル・バージョンでの演奏です。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18 より 第3楽章

 クラシック音楽には、何十年何百年という時をこえて人々に感動を与える数々の名曲があります。「はやり・すたり」とは無関係のようにも思えますが、実は何かのきっかけで、クラシックの作品もすごく人気が出たり、何十年も忘れ去られてしまうこともあります。このセルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943)のピアノ協奏曲第2番は、この10年ほどで特に大きな人気を集めているピアノ協奏曲で、非常に多くのコンサートで取り上げられています。胸を打つドラマティックなメロディーや、オーケストラの厚みのある響き、そしてピアニストの華やかなテクニックも披露されるなど魅力がいっぱいありますから、人気になるのも当然です。フィギュアスケートの浅田真央さんが現役選手の時代に、2014年のソチオリンピックでこの曲を使ったことも、日本で広く知られるきっかけになりました。
 ラフマニノフはこのピアノ協奏曲の4年前(23歳)、せいいっぱい書き上げた最初の交響曲を発表しましたが、コンサートの演奏は大失敗に終わり、おまけに批評家からも厳しく批判されてしまいました。しばらくは作曲する気持ちにはなれませんでしたが、指揮者としての才能を開花させ、オペラ劇場にデビューするなど、音楽家としての力を着々とつけていきました。
 そして1901年(28歳)には、このピアノ協奏曲第2番で見事な大成功をおさめることができました。初演ではもちろんラフマニノフ自身がピアノを弾きました。彼はとても大きな手をした優れたピアニストでもあったのです。
 今日演奏される第3楽章は、この協奏曲を締めくくるフィナーレの楽章です。おどけるような歯切れのよいリズムをオーケストラが奏でたあと、ピアノが勢いよく登場し、元気な主題を奏でます。民謡風の伸びやかなメロディーも登場し、メリハリをつけながら進み、明るく力強いクライマックスを迎えます。

コラム
音楽と色
その3 キラキラと輝く金管楽器!

 たくさんの楽器がせいぞろいしているオーケストラ。その音色はとてもカラフルですね。響きは色鮮やかですが、オーケストラのステージはわりと地味(?)に見えるかもしれません。オーケストラ奏者の皆さんは、いつも基本的には黒い洋服を着ていますよね。なぜ奏者の衣装が黒いかというと、礼儀正しい服装にふさわしい色だと考えられているからです。また、オーケストラは多い時で100人以上もいますから、みんなでバラバラの格好をしていたら、ちょっとまとまりがなく見えてしまいます。音楽を聴いている人が集中できるように、みんなで同じ色味で統一しているという理由もあります。
 さて、そんな落ち着いた見た目のオーケストラだからこそ、キラキラとひときわ輝きを放って見えるのが金管楽器ではないでしょうか。オーケストラの後方に並んでいます。文字通り金属でできた楽器で、その多くが銅と亜鉛をまぜた「真鍮」という金属でできています。
 おもな金管楽器にトランペット、ホルン、トロンボーン、テューバがあります。トランペットはその昔、軍隊で遠く離れた仲間に音で合図を送るために使われていました。ホルンも狩りに出かけたときの合図で用いられていました。ホルンのご先祖さまは動物の角で作られた角笛です。トロンボーンは長らく教会の中で合唱団とともに音楽を奏でてきた歴史があります。すごく低い音で音楽を下支えしてくれる大きなテューバは比較的新しい楽器で、1820年代から活躍しはじめた楽器です。

  • トランペット



  • ホルン



  • トロンボーン



  • テューバ


 ちなみにフルートやサクソフォーンも金属のキラキラ輝く楽器ですが、フルートはもともと木で作られ、サクソフォーンは木管楽器と同じ音の出し方をするため、どちらも木管楽器の仲間とされています。
 かつて軍隊の儀式や狩りで、トランペットやホルンが音信号をパンパカパーン!と短く鳴らしていた音楽を「ファンファーレ」と言います。オーケストラ音楽の中にも、金管楽器だけで元気に奏されるファンファーレのようなフレーズはよく登場します。

(文 飯田有抄)