プログラムノート

第62回 2017年11月4日(土)「メインディッシュはピアノとともに」

鈴木美音:『はりねずみのベッド』じょ曲
ラヴェル:『古風なメヌエット』
ドビュッシー:『小組曲』より「小舟にて」「バレエ」
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K. 467より 第2楽章
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18 より 第3楽章

プログラムノート 飯田有抄(音楽ライター)

 今年のこども定期演奏会のテーマは「楽器ア・ラ・カルト」です。コース料理とはちがって、自分でお好みの料理をメニューから選んで注文するのが「ア・ラ・カルト」。食べたい一品を選んで味わうように、テーマとなる楽器の音色を楽しみましょう。今日のコンサートは「メインディッシュはピアノとともに」。ピアノと関係のあるオーケストラ曲や、ピアノ連弾曲、ピアノ協奏曲をご紹介します。

「こども定期演奏会2017」テーマ曲
鈴木美音:『はりねずみのベッド』じょ曲

鈴木美音さん(小学校2年生)からのコメント
 えんそう会がはじまる時のきもちを考えていたら、すごくわくわくして楽しいメロディーがうかんできました。
 曲といっしょに、ハリネズミきょうだいが出てくるものがたりも考えました。
 かわいくてウキウキするかんじがとても気に入っているので、たくさんのがっきでえんそうしてもらえるのを楽しみにしています。
 わたしがもっと大きくなって音楽のべんきょうをいっぱいしたら、ものがたりのさいごまで、オーケストラのがくふを書いてみたいです!!

ラヴェル:『古風なメヌエット』

 最初はオーケストラの曲を聴いてもらいます。作曲者は今から100年ほど前に活躍していたモーリス・ラヴェル(1875~1937)。フランス人です。ラヴェルは「オーケストラの魔術師」と呼ばれるほど、オーケストラの楽器を上手に組み合わせて、とてもすてきな響きを生み出すのが得意な人でした。
 今日演奏する『古風なメヌエット』は、最初はピアノ用の作品として書かれたものです。ラヴェルがまだパリ音楽院の学生だった20歳の頃に作曲され、3年後には楽譜が出版されました。ラヴェルにとって、自分の曲が出版されるのはそれが初めてのこと。記念すべき大切な作品となったのでしょう。それから30年以上も経ってから、ラヴェルはもともとピアノ曲だったこの曲を、オーケストラ用にアレンジしました。
 メヌエットとは17世紀に生まれた3拍子の踊りです。ラヴェルは「古風な(antique)」という言葉を付けていますが、メヌエットが生まれた頃よりももっと昔の音楽の響きを取り入れたり、逆にとても新しい響きの和音を組み合わせたりして、どこか懐かしくそして新鮮さを感じさせる音楽に仕上げました。


ドビュッシー:『小組曲』より「小舟にて」「バレエ」

 クロード・ドビュッシー(1862~1918)は、ラヴェルと同じ時代に活躍したフランスの作曲家です。ドビュッシーには詩人の友達がたくさんいました。中でも、人の心の中のようすや感じたことをそのまま表現しようする「象徴主義」と呼ばれる詩人たちと、若い頃からとても仲良くしていました。『小組曲』は、そうした詩人たちとの交流の中から生まれた作品です。ピアノ連弾のために書かれたこの組曲は、「小舟にて」「行列」「メヌエット」「バレエ」の4曲から成り立っており、このうち、「小舟にて」と「行列」は、象徴主義の代表的な詩人ヴェルレーヌの詩集にちなんでタイトルを付けています。また「メヌエット」もバンヴィルという人の詩による歌曲をベースにしています。
 1889年に楽譜が出版され、ドビュッシーとその親友で出版業者でもあるデュランによって初演がなされました。その後、フランスの指揮者であり作曲家のビュセールが、オーケストラ用に編曲をしました。本日演奏されるのは、原曲のピアノ連弾版と、オーケストラ編曲版とをミックスした、こども定期演奏会オリジナル・バージョンです。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K. 467より 第2楽章

 続いては、さらに時代を100年ほどさかのぼって、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~91)のピアノ協奏曲を聴きましょう。ピアノ協奏曲では、ピアノの独奏者とオーケストラとがお話をするように、ときには張り合うように、またときには一体となって音楽を奏でます。ピアノの演奏が得意だったモーツァルトは、ピアノ協奏曲をたくさん書きました(第27番まで番号の付いたものがあります)。なかでも第21番ハ長調は、朗らかで優雅な雰囲気の人気曲です。この協奏曲は全部で3つの楽章から成り立っていますが、今日はゆったりとした美しい第2楽章が演奏されます。弱音器をつけたヴァイオリンが柔らかくメロディーを奏で、やがてそれはピアノへと受け継がれて、ゆったりと歌われていきます。この美しいメロディーは、映画音楽などにも使われて広く知られています。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18 より 第3楽章

 おしまいはロシアの作曲家セルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943)の協奏曲です。優れたピアニストでもあったラフマニノフのピアノ作品は、胸にこみ上げるようなメロディーが現れたかと思えば、目のくらむほどたくさんの音符がアクロバティックに飛び交ったりします。ピアノ協奏曲第2番は1900年の秋から半年ほどで書き上げられ、1901年(28歳)に発表されるとすぐに人気となりました。ラフマニノフはそれより前に交響曲第1番を発表したのですが、初演が大失敗に終わりすっかり自信を失っていました。しかし、この協奏曲第2番のヒットのおかげで、彼は作曲家としての自信を回復することができたそうです。第1楽章は、フィギュアスケートの浅田真央さんがオリンピックの演技で使用したこともあり、日本でも大変有名になりました。今日は最後の楽章である第3楽章を取り上げます。リズミカルで賑やかな音型や、華やかなピアノのフレーズがたくさん聴かれると同時に、ラフマニノフらしい歌心に満ちたメロディーも登場します。