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プログラム・ノート
   
プログラム 2011年11月26日(土)
 
第40回  四季
山口睦紀:「こども定期演奏会2011」テーマ曲(編曲:長山善洋)
J.シュトラウスII:ワルツ『春の』声
メンデルスゾーン:『真夏の夜の夢』から「結婚行進曲」
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集『四季』から「秋」
ブラームス:交響曲第3番へ長調 から 第3楽章
チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調「悲愴」から第1楽章
 
プログラムノート 有田 栄(音楽学)
 ■J. シュトラウスII:ワルツ 『春の』声

 ヨハン・シュトラウスII世(1825〜99)は、音楽の都ウィーンで活躍した作曲家です。シュトラウス家は音楽一家で、父も兄も有名な作曲家でした。とりわけ、シュトラウスが音楽家になることを反対していた父親は、彼のもっとも強力なライバル。父よりすぐれた音楽家になることが彼の目標でした。そんな親子の芸術の戦いは、『美しく青きドナウ』などのたくさんのワルツの名曲となって、今も世界中の人々を楽しませています。
 毎年、クリスマスと新年のお祭りが終わり、謝肉祭の季節(2月ごろ)がやってくると、ウィーンは舞踏会のシーズン。街中にシュトラウスの音楽があふれはじめます。風はまだ冷たく吹き付けていますが、人々はそこに、やがて来る春の香りを感じ取ります。
 そんな季節のある日のこと、シュトラウスは、知り合いの家の夕食に招かれていました。お客さんたちの中には、有名なピアニストのリストもいました。夕食後のひととき、誰からともなくピアノを弾き始め、みんなで即興的に音楽を作ったり、連弾したりと、楽しい時間をすごしました。興がのったシュトラウスは、自分やリストたちが即興で弾いた音楽をつなぎ合わせ、それをもとにその場で新しいワルツを作曲しました。それがこの『春の声』だと言われています。お客さんたちはきっとみんな喜んで、楽しく踊り明かしたことでしょうね。

 
 ■メンデルスゾーン:『真夏の夜の夢』から 「結婚行進曲」

 音楽家たちの中には、年をとってからすぐれた才能を発揮する人もいれば、子どもの時からプロとして活躍している人もいます。ドイツの作曲家、フェリークス・メンデルスゾーン(1809〜 47)は、その後者のほう。9歳の時には、すでにピアニストとして演奏会の舞台に立っていました。しばらくすると彼は作曲の勉強も始め、先生も舌をまくようなすばらしい曲を書くようになります。ピアノを弾いたり、作曲をしたりするほかにメンデルスゾーンが好きだったのは、本を読むことです。なかでも、イギリスの劇作家シェイクスピアの戯曲は彼のお気に入りでした。
 メンデルスゾーンは、17歳の時にシェイクスピアの『真夏の夜の夢』を読んで、その幻想的な世界のとりこになってしまいました。ヨーロッパではむかしから、夜がもっとも短い夏至の日の夜には、よう精や魔物たちが飛びまわり、不思議なことが起きると言い伝えられています。本のページをめくるたびに飛び出してくる、よう精たちの魔法の世界を、少年メンデルスゾーンは生き生きと音楽の中に描いていきました。
 物語のきっかけは、よう精の王オーベロンと女王ティターニアの夫婦げんかです。ティターニアをこらしめてやろうと、オーベロンは、いたずらよう精のパックに命じて、ティターニアにいじわるな恋の魔法をかけさせます。ところが、パックが人間たちにも同じ魔法をかけてしまったから、さあ大変。恋人たちは相手を間違え、だれがだれを好きだったのか、だれがだれを追いかけていたのか、さっぱりわからなくなって大混乱!——しかし最後には、オーベロンの力で魔法がとけ、恋人たちの晴れやかな結婚式が行われます。メンデルスゾーンは、はじめこの音楽を仲よしの姉ファニーと連弾するためにピアノで書き、そのあとでオーケストラ用に書きなおしました。

 
   
   ■ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集『四季』から 「秋」
 

 アントニオ・ヴィヴァルディ(1678〜 1741)は、今から300年くらい前に、イタリアのヴェネツィアで活躍していた作曲家です。彼は、おさない時からすばらしいヴァイオリンの才能をあらわし、10歳の時には、ヴェネツィアの「聖マルコ大聖堂」という有名な大きな教会のオーケストラのメンバーになって演奏していました。やがて神に仕える神父になったヴィヴァルディは、親のいない子どもたちを集めて楽器を教え、彼らのオーケストラを作ります。彼の作品の多くは、このオーケストラのために書いたものです。
 きょうは、ヴィヴァルディの作品の中でももっとも有名な曲集『四季』の中から聴いていただきましょう。『四季』は、ヴァイオリンのソロ(独奏)とオーケストラとで演奏する、「協奏曲」という種類の音楽です。「春」「夏」「秋」「冬」の4つの曲からなっていますが、きょうは「秋」を演奏します。管楽器をまったく使わない弦楽器だけのオーケストラで、秋の風物詩をあざやかに描いています。
 作物の刈り入れが終わり、農民たちが収穫を祝っています。つぎつぎとお酒がふるまわれ、よっぱらった人々は、やすらかな眠りにおちていきます。やがて夜が明け、角笛の音が響いて、勇壮な狩りの始まりです。逃げるえもの。追いかける猟犬たち。秋の日の楽しい光景が繰り広げられます。

 
   
   ■ブラームス:交響曲第3番へ長調から第3楽章
 
 メンデルスゾーンやヴィヴァルディとはまったく対照的に「大器晩成」型だといわれるのが、ドイツの作曲家、ヨハネス・ブラームス(1833〜 97)です。彼ももちろん才能豊かな音楽家でしたが、世の中に認められるだけでなく、自分自身も納得するような大きな仕事をなしとげたのは、40代のなかばごろのことでした。そうして長い年月をかけてじっくりと作り上げたブラームスの最初の交響曲は、オーケストラの歴史に残るすばらしい作品でした。そしてそれから彼は、まるでせきを切ったように、交響曲の名曲をつぎつぎと生み出していったのです。
 ブラームスの活躍した時代には、オーケストラの人数も、また使われる楽器の種類も増え、きらびやかではなやかな大音響の音楽がたくさん演奏されていました。しかしブラームスは、昔と変わらない、できるだけシンプルなオーケストラを使います。シンプルな音だからこそできる、豊かな表現というものがあるからです。人の心をとらえてはなさない、せんさいなメロディー。オーケストラの中からこんこんとわき出してくるような力強い音の流れ。そして、明るい音色の音と、暗いかげりのある音色の音とが重なりあって、なんともいえない美しい響きを作り出します。
 きょうお聴きいただく交響曲第3番は、まさにそうしたブラームスらしい音楽です。これを作曲したのはブラームスが50歳の時。人生の秋に、彼はその豊かな実りの季節にふさわしい音楽を奏でたのです。
 
   
   ■チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調「悲愴」から第1楽章
 
 最後の曲は、オペラやバレエの作曲家として知られるピョートル・チャイコフスキー(1840〜 93)の作品です。チャイコフスキーは、子どものころ劇場ではじめてオペラを見て感動し、音楽家になりたいと思ったのだそうです。しかし家が裕福ではなかったので、彼は家族の生活を支えなければならず、学校を出てすぐ働きはじめました。それでもどうしても夢があきらめられず、20歳の時にようやく音楽学校に入り、本格的な音楽の勉強を始めました。
 苦労して音楽の勉強をしたチャイコフスキーにとって、音楽はまさに生きることそのものでした。「人生には、希望に満ちた幸せな時もあれば、悩んだり、苦しんだり、悲しんだりしなければならない時もある。しかしそれが『生きる』ということなのだ…」。チャイコフスキーの音楽には、彼のそうした思いがあふれています。お聴きいただくこの曲でも、彼は私たちの「人生」を描こうとしたのだと言います。彼が音に託したそのメッセージが、みなさんにも聴こえてくるでしょうか。
 この曲をはじめて演奏会で演奏したわずか9日後に、チャイコフスキーはとつぜんこの世を去ってしまいました。「悲愴」という題名は、彼の弟がつけたものだと言われています。
 
   
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