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2008年3月1日(土) |
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■ワーグナー:楽劇『ジークフリート』から「森のささやき」 |
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リヒャルト・ワーグナー(1813-83)は、今から百数十年前のドイツで活躍した有名なオペラの作曲家です。彼は、ドイツに伝わるさまざまな伝説を題材に、それまでだれも見たことのないようなオペラを作ろうとしました。オペラは、ただ音楽が美しいだけではだめだ。よく考えられたせりふ、心にせまるような歌手たちの演技、そして見ている人をその世界に引きこむような舞台装置がそろって、はじめてほんとうの「オペラ」ができあがるのだ.それがワーグナーの考えでした。「音楽と演劇がいっしょになって作るオペラ」という意味で、彼は自分のオペラを「楽劇」と呼びました。
ワーグナーが書いた一番有名な楽劇は、『ニーベルングの指環』です。これはとても大きな作品で、『ラインの黄金』、『ワルキューレ』、『ジークフリート』、そして『神々のたそがれ』という4つの物語からなっています。ふつう1つのオペラは、3時間くらいの長さなのですが、『ニーベルングの指環』は、4つの物語を全部演奏すると、なんと4日もかかります!きょう聴いていただくのは、『ジークフリート』の一場面です。むかしむかし。「ライン川の底に眠る黄金を手に入れたものは、世界を支配することができる」.この言い伝えをめぐって、神々とニーベルング族、そして巨人族がはげしく争っていました。「指環」となったラインの黄金は、ニーベルング族から、巨人族の手にわたり、今はおそろしい竜に姿を変えた巨人族のファフナーが洞窟の中でしっかりと守っています。この争いに出おくれた神々は、人間を味方につけようとします。その期待をせおっているのがジークフリートなのですが、彼はまだそのことを知りません。赤ん坊の時に父と母を失ったジークフリートは、深い森の中で、ニーベルング族のミーメに育てられたのです。明け方の静かな森の中。ジークフリートは、顔も知らない父や母のこと、いつかあらわれる恋人のことなどを考えています。やがて朝の光がさし、鳥たちの声が聞こえると、ジークフリートは笛や角笛を吹いて、小鳥たちに話しかけようとします。これが「森のささやき」の場面です。けれども彼の角笛は、洞窟の中の竜まで起こしてしまいます。はたしてジークフリートの運命は・・・。 |
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■ドップラー:ハンガリー田園幻想曲 |
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| アルベルト・フランツ・ドップラー(1821-83)は、ワーグナーと同じ時代に活躍した有名なフルート奏者です。彼は13歳の時に、オーストリアの首都で「音楽の町」として知られるウィーンでデビューし、大成功をおさめました。その後、ハンガリーやウィーンの歌劇場のオーケストラで、フルート奏者として、また指揮者として活躍しました。若いころから、おなじくフルート奏者だった弟といっしょに、世界中のあちらこちらへ演奏旅行にも出かけています。(ちなみに、科学や理科の好きな人にはおなじみの、走っていく救急車の音が変化する「ドップラー効果」を発見したドッラーは、同じころウィーンで活躍していた物理学者ですが、別人です。) お聴きいただく『ハンガリー田園幻想曲』は、彼の一番よく知られた作品です。ゆったりと歌うような部分と、速くて情熱的な部分が入れかわり出てくるのは、ハンガリーの音楽の特徴です。フルートという楽器が奏でることのできる、あらゆる音色や表情、そしこくさいてそれを作り出す演奏者のすばらしいテクニックを、たっぷりと楽しむことができます。 |
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■フルート:高木綾子 |
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驚異的なテクニックと深い音楽性を兼ね備えた若きフルート界のス年日本音楽コンクール第1位、2005年ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクール第3位。
国内主要オーケストラとの共演のほか、リサイタルや室内楽活動もっている。また、ミラノ・スカラ弦楽合奏団、新イタリア合奏団、シュトゥットガルト室内管の日本ツアーのソリストとして同行した。2004年秋にはパリ室内管弦楽団との共演でパリ・デビューを果たした。CDもデンオン・レーベルより数多くリリースされ好評を得ている。従来のクラシック演奏家の活動の枠にとらわれない幅広い活動が各方面から注目を集めている。2001年新日鐵音楽賞受賞。 |
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■ロッシーニ:オペラ『ウィリアム・テル』序曲
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「イタリアのモーツァルト」と呼ばれたジョアキーノ・ロッシーニ(1792-1868)は、19世紀前半に、おそらく一番人気のあったオペラの作曲家です。彼の音楽の魅力は、なによりばつぐんに楽しいこと。それもそのはず。彼のオペラには、長い伝統の中で積み重ねられてきた、いろいろなオペラの一番いいところが、すべて入っているからです。イタリアのオペラが得意な、美しく流れるような歌のメロディ。フランスのオペラが得意な、ドラマティックなせりふや演技、すばらしい舞台装置。そしてドイツのオペラの作曲家たちが得意な、色とりどりの楽器の音色を組み合わせたオーケストラの音楽。その全部がひとつになった「理想のオペラ」が、『ウィリアム・テル』でした。 『ウィリアム・テル』は、ドイツの大作家、シラーが書いた有名な戯曲(しばい)がもとになっています。舞台はいまから700年も昔のスイス、ルツェルン湖のほとりの村。そのころスイスは、ローマ帝国に支配されていました。テルたちの村にローマからつかわされたゲスラーは、権力をたてにいばりちらす悪代官。テルは、村の人々や、同じように苦しめられている国中の人々とともに力を合わせて立ちあがり、ついに祖国に自由と独立を勝ち取るのです。いろいろなエピソードの中でも、弓の名人テルが、悪代官の命令で、息子の頭の上のリンゴを射る場面は有名です。
お聴きいただく「序曲」は、このオペラの物語をぎゅっとつめこんだ4つの部分でできていて、まるでオペラの「予告編」を見ているかのように、わくわくする場面が次々と出てきます。湖のほとりの村の、静かな夜明け。やがて遠くから、あらしをつげる雷の音が聞こえてきます。そして激しい雨と風。やがてあらしが遠ざかると、羊飼いたちが羊や牛を追う姿が見えてきます。とつぜん、静けさを切りさいてトランペットのファンファーレが鳴り響き、自由を求めていさましくつき進む、「スイス軍の行進」が始まります。 |
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■J.シュトラウスII:ウィーンの森語の物 |
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| 「ワルツの王」と呼ばれるヨハン・シュトラウス二世(1825-99)が、はじめてワルツを作曲したのは、6歳の時でした。彼の家は、お父さんも、弟たちもみな音楽家。シュトラウスは、お父さんと名前が同じ「ヨハン」なので、区別するために「二世」と呼ばれています。子どものころからお父さんの音楽を聴いて育ったシュトラウスには、音楽を作ることは、息をしたり、ごはんを食べたりするのと同じくらい、自然なことだったのでしょうね。お父さんは、シュトラウスが音楽家になるのは反対だったのですが、彼にはそれ以外の道はまったく考えられなかったのです。シュトラウスは、彼の愛するウィーンの町を、音楽の中で描き続けました。町を流れるドナウ川。市民のいこいの場である森。そして日々のくらしの中で、音楽を愛し、ワルツを愛する人々の笑顔・・・。シュトラウスにとって、音楽はいつもウィーンの空、ウィーンの森、ウィーンの街角に満ちていたのでした。 |
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森のささやき |
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ヨーロッパの人々にとって、森は特別な存在です。今の大都市の姿からは想像もできませんが、むかしむかし、今から千年くらい前の「中世」という時代のヨーロッパは、どこもかしこも深い森におおわれていました。人々は、やっとの思いで森を切り開いたわずかな土地に、身をよせあってくらしていました。
村のすぐそばにせまる森、昼でも暗く、教会の鐘の音もとどかない森は、どうもうなけものや、山賊たち、それに魔女たちが住むおそろしい場所でした。
となりの村に行くなど、どうしても森の中を通らなければならない時、人々は生きた心地がしませんでした。いつけものに食べられるか、魔女のすみかに迷いこんでしまうか、わからないからです。むかしから伝わるおとぎ話.たとえば「あかずきん」や「ヘンゼルとグレーテル」「いばら姫」「ロビン・フッド」などのお話は、そんな森への「おそれ」から生まれたものです。「ハリー・ポッター」にも、魔法の生き物たちのいる森が出てきますよね。森は、むかしからおとぎ話やファンタジーのふるさとでした。 ですから森の中で、人は、ちょっとした音にも敏感になります。木々の葉のざわめく音や、鳥たちの声は、まるで森が人間に話しかけ、合図をしてくているかのようでした。ワーグナーの音楽の主人公、ジークフリートも、森のささやきを聞いて、危険から身を守り、美しい花嫁と出会うことになります。
また暗い森の中で、ときおり木々の間から見える明るい空の光は、おびえる人間にとって何よりありがたいものでした。ぶじに森をぬけ、太陽の光を見た人々は、ほっとして思わず神に感謝したことでしょう。そのころの古い教会にたくさん作られた、色とりどりのガラスをはめこんだ「ステンドグラス」は、森の中で枝や葉のすきまから見た光をイメージしているのだといいます。これも、森が生み出した芸術のひとつです。
たくさんの森が失われた現代の私たちには、もう、森への「おそれ」もなくなりました。けれどもそれとともに、語りかけてくる森のささやきも聞こえなくなり、わずかな光に感謝する気持ちもなくなってしまったのだとしたら、ちょっとさびしいことかもしれませんね・・・。 |
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