――――故郷の町とこども時代のエピソードを紹介してください。
ジョナサン18 歳までフロリダのセントピーターズバーグSaint Petersburgで育ちました。ロシアの「サンクトペテルブルク」と綴りが同じでしょう?実際にロシアからの移民も多くいます。昔は「神様の待合室」といわれていたことがあるんですよ。なぜかというと、リタイアしたお年寄りばっかりの町だったから(笑)。でもいまは全然違って、サッカー、野球、アメフトが盛んです。タンパ・ベイに面するとても美しいビーチタウンで、1 年中あたたかく、過ごしやすいところ。観光客もたくさんいます。うちから車で30 分くらいのブッシュガーデンは「ベスト・パーク」だと思うな。ディズニー・ワールドもいいけど、もっとお薦めですよ。とにかく町全体がリラックスした雰囲気で、クラシックのコンサートもみんな普段着で気楽に楽しんでいます。
亜貴子私のホームタウンはサンフランシスコ。25 歳で日本にくるまでずっとここです。1 年中寒く、平均気温はだいたい8 度くらい。雪のない北海道という感じですね。私の母は日本人で小樽の出身だったため、北海道にも何回か行ったことがあります。母がヴァイオリンをやっていて、私も自然に習うことになりました。でももっと大きな楽器をやりたくて、10 歳の時、チェロに転向したんです。
ジョナサン僕は小さい頃はアメフト選手になりたかったんだけどね。10 歳上の兄がトランペットをやっていたので家に楽器があって、学校の授業でレッスンを始めたんだけど、ぜんぜんうまくいかなくて、クラスでワースト(一番下手な)・トランペッターになっちゃった。それでホルン・プレイヤーがいないというのでホルンを始めたんです。最初はむずかしくて大変だったけれど、だんだん練習するのが楽しくなって音楽が大好きになりました。金曜の夜、友だちはだいたい野球のゲームか映画をみにいくのに、僕だけ先生がホルンを吹いていたフロリダ・シンフォニーのコンサートに行ってたんです。サッカーもチームに入って続けていたけれど、ホルンとの両立がむずかしくなって、16 歳のときにチームをやめました。スポーツといえば、彼女はすごいアスリート(運動選手)なんだよ。
亜貴子ソフトボールとマラソンをやってました。フル・マラソンを完走したこともあります。東京にきてからは時間がなくて。いまは電車の乗り継ぎにチェロを持って走るくらい(笑)。
――日本にきて驚いたことはありますか?
亜貴子そ んなにないですね。母からいろいろ聞いていたし、何回か来たことがあったので。
ジョナサン とにかくきれいでちゃんとしていること。電車は時間どおりにくるし、どこも清潔。ニューヨークとぜんぜん違う。そういう日本のきちんとしたところ、誠実なところが好きです。
――ライフスタイルも変わったのでは?
亜貴子サンフランシスコはパーティも多かったし、学校帰りにバーに行ったり、仲間で集まる機会がもっとたくさんありました。いまは仕事が忙しいし、日本での友だちが少ないこともあるけれど、それが減ったのが少し残念ですね。
ジョナサン たしかに新しい場所で仕事をしながら友だちを作るのは大変だよね。でもこれまで知らなかった場所で生活して、新しい言葉、文化を勉強して、その土地の人とコミュニケートするというのは、誰でも経験できることではないので、すごく貴重な経験だと思う。たしかに言葉の壁は大きくて、深い会話ができないという問題はあるかもしれないけど。僕は東響に入って5 年になるけど、日本の友だちがたくさんできて、すごく楽しい(ジョナサンさんは日本語ペラペラ、漢字もかなり書けるそうです)。
――ではアメリカの音楽について聞かせてください。
亜貴子アメリカはすごく大きくて、場所によってぜんぜん違う。その多種多様なところが特徴だと思います。ジャンルもたくさんあるし、ジャズひとつとっても、ニューオリンズ、カンザスシティ、シカゴではそれぞれ違う。バーンスタインやコープランド、カーターなど20 世紀を代表する作曲家の曲も、それがイメージされた場所によってぜんぜん違って、ニューヨークだったり、アパラチア山脈だったり、アリゾナ砂漠だったり、それぞれの響きをもっている。加えて、ユダヤ、アフリカなど、ほかのいろいろなところからの影響がミックスされているのもアメリカらしいところですね。
ジョナサンで も一般的にいって、クラシック音楽はそんなに盛んじゃないよね。ごく普通の人は「フレンチ・ホルン」といってもよくわからない。
亜貴子そうかも。チェロとギターの区別つかない人もいるくらいだから。
ジョナサン音楽の経験でいえば、日本のほうがクラシック音楽を楽しめるチャンスは多いと思う。ブラスバンドやアマチュア・オーケストラが盛んだし、プロの音楽家にならなくても、仕事をしながら趣味でトランペットを吹いて、発表会をやったりできるでしょう?アメリカは何かを犠牲にしなければ、音楽を続けていけないところがある。
亜貴子それとこどものためのコンサートは日本より少ないですよね。私の頃はせいぜい1 年に1 回くらいでした。「こども定期演奏会」があるなんて考えられない!こういうコンサートがあったら、私も行っていたのに。なにか文化に対する強い意識が欠けているのかな。
ジョナサンうん、たしかにニューヨークはすばらしく国際的な町だけれど、「これがアメリカのカルチャーです」といえるものはないかもしれない。ブラジルの人と話をすると、彼らの文化にすごく誇りをもっているのが伝わってくるけれど、そういうアイデンティティはアメリカには薄いですね。でもアメリカ人は何にでも真剣で、他の人々や国のことを考えるのがいいところだと思う。戦争はよくないけどね。僕の大好きなグルーパ(魚)・サンドイッチもあるし、ハンバーガーやコーラのサイズもビッグだし。
亜貴子自然が美しいのと、それぞれの町が個性的なところがいいですね。サンフランシスコの食べ物のお薦めは、メキシカンのブリートかしら。
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