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プログラム・ノート
   
プログラム 2006年4月15日(土)
 
第17回『アメリカ』〜ローマ・ミラノ・ヴェニス・ナポリ〜
ロッシーニ:オペラ『セビリャの理髪師』序曲
プッチーニ:オペラ『トスカ』から「歌に生き、恋に生き」
ソプラノ:澤畑恵美
プッチーニ:オペラ『トゥーランドット』から「誰も寝てはならぬ」
テノール:福井 敬
プッチーニ:オペラ『ジャンニ・スキッキ』から「わたしのお父さん」
ソプラノ:澤畑恵美
ディ・カプア作曲オ ・ソレ・ミオ(私の太陽)
テノール:福井 敬
ヴェルディ作曲オペラ『椿姫』から「乾杯の歌」
ソプラノ:澤畑恵美/テノール:福井 敬
ガブリエーリ作曲 第7旋法 第2番
ヴィヴァルディ:協奏曲集『四季』から「春」
ヴァイオリン:大谷康子
メンデルスゾーン作曲交響曲 第4番 イ長調『イタリア』から 第4楽章
レスピーギ:『ローマの祭』から第4曲「公現祭」
 
音楽の国めぐり(1) ― イタリア
音楽の国 第1回 イタリア編 アントニオ・マルティさん
 
 プログラムノート 有田 栄(音楽学)
   ロッシーニ:オペラ『セビリャの理髪師』序曲
 
「イタリアのモーツァルト」とよばれたジョアキーノ・ロッシーニ(1792- 1868 )は、当時イタリアだけでなく、ヨーロッパ中で一番人気のあるオペラの作曲家でした。『セビリャの理髪師』は、スペインの町セビリャを舞台にしたオペラ。陽気な召使いフィガロが知恵をしぼって、ご主人様の伯爵と美しい娘ロジーナとの恋をおうえんするお話です。ロッシーニの楽しい音楽、とくに人気者のフィガロの歌は、大ヒット・ソングでした。
 
   
   プッチーニ:オペラ『トスカ』から「歌に生き、恋に生き」
 
ジャコモ・プッチーニ(1858- 1924 )は、オペラの国イタリアが生んだ、大作曲家の一人です。彼が書いたたくさんのオペラの中でも、『トスカ』はもっともドラマティックな作品です。主人公のトスカは、美しい歌手。恋人の画家、カヴァラドッシと深く愛しあっています。けれどもカヴァラドッシは、警察に追われる友人を逃がしたためにつかまってしまい、死刑になることに。それを知ったトスカは、自分をぎせいにして彼を助けようと決心します。これは、「私はほこり高く、正しく生きてきたのに、なぜこのように苦しまなければならないのですか」と泣きながら神に祈るトスカの歌です。
   ソプラノ:澤畑恵美
 
国立音楽大学卒業、同大学院修了。文化庁オペラ研修所修了。第58回日本音楽コンクール声楽部門第1位。第21 回ジロー・オペラ賞受賞。文化庁派遣芸術家在外研修員としてミラノへ留学。『フィガロの結婚』のスザンナ役、『椿姫』ヴィオレッタ役ほか数多くのオペラでその魅力を余すところなく発揮している。03年『ばらの騎士』ゾフィー役では名演出家G.クレーマーより最大級の賛辞が寄せられた。最近では三木稔作曲:オペラ『じょうるり』(日本語版日本初演)に主演。コンサートにおいても、G・ベルティーニ、E・インバルなどの著名指揮者や主要オーケストラと数多く共演。気品ある歌唱と華のある舞台姿で、現在最も人気・実力を兼ね備えたソプラノである。二期会会員。
 
   
   プッチーニ:オペラ『トゥーランドット』から「誰も寝てはならぬ」
 
プッチーニのオペラには、一度聴いたらけっして忘れられない、すてきなアリア(歌)がたくさんあります。そうしたアリアでは、歌手たちのすばらしい声だけでなく、オーケストラもまた、登場人物たちの心の動きをいきいきと描きます。『トゥーランドット』は、中国を舞台にしたオペラです。美しいトゥーランドット姫は、結婚をもうしこむ若者に謎をかけ、とけなければ首をはねてしまうという、冷たい心の持ち主でもありました。その謎をみごとに解いたのは、王子カラフ。それでもがんこに結婚をはねつけようとする姫に、王子は、朝までに自分の名前を当ててみなさい、とぎゃくに謎かけをします。その夜、運命の夜明けを待ちながら、王子は姫への深い愛を歌います。
   テノール:福井 敬
 
輝かしい声と情感あふれる演技、幅広い表現力で、いまや日本のオペラ、声楽界を代表するテノールとして最も信頼を集めている。国立音楽大学卒業。同大学院、文化庁オペラ研修所を修了。イタリア留学後、二期会創立40 周年記念『ラ・ボエーム』でデビュー。以来、新国立劇場『ローエングリン』、Bunkamura 『トゥーランドット』など、話題の公演で次々と大役を演じ、絶賛されている。最近では新作オペラ『白鳥』、東京二期会『ラ・ボエーム』などに相次いで主演。常に渾身の演技と質の高い歌唱に賞賛の声が止まない。芸術選奨文部大臣新人賞、出光音楽賞、エクソンモービル音楽賞洋楽部門本賞、ジロー・オペラ賞など多数受賞。二期会会員。
 
   
   プッチーニ:オペラ『ジャンニ・スキッキ』から「わたしのお父さん」
 
中世のフィレンツェの町を舞台にした『ジャンニ・スキッキ』は、イタリアの有名な作家ダンテの作品にもとづいて書かれたオペラ。お金持ちの老人の残した財産をめぐって争うよくばりな親せきたちを、頭のいいジャンニ・スキッキがだましてしまう、というこっけいな喜劇(人間のすがたをありのままに描いた劇)です。このアリアは、ジャンニ・スキッキの娘ラウレッタの歌。恋人のリヌッチオとどうしても結婚したいラウレッタは、父親に心を打ち明け、心をこめて歌います。
   ソプラノ:澤畑恵美
 
国立音楽大学卒業、同大学院修了。文化庁オペラ研修所修了。第58回日本音楽コンクール声楽部門第1位。第21 回ジロー・オペラ賞受賞。文化庁派遣芸術家在外研修員としてミラノへ留学。『フィガロの結婚』のスザンナ役、『椿姫』ヴィオレッタ役ほか数多くのオペラでその魅力を余すところなく発揮している。03年『ばらの騎士』ゾフィー役では名演出家G.クレーマーより最大級の賛辞が寄せられた。最近では三木稔作曲:オペラ『じょうるり』(日本語版日本初演)に主演。コンサートにおいても、G・ベルティーニ、E・インバルなどの著名指揮者や主要オーケストラと数多く共演。気品ある歌唱と華のある舞台姿で、現在最も人気・実力を兼ね備えたソプラノである。二期会会員。
 
   
   ディ・カプア作曲オ ・ソレ・ミオ(私の太陽)
 
音楽の国イタリアの中でも、南イタリアの港町ナポリは、とりわけ歌を愛する人々の集まる町として知られています。昔から毎年のように歌合戦が開かれ、漁師さんから王や貴族までが参加して歌をきそったと言われているほどです。そんなナポリの人々の歌は、「ナポレターナ」とよばれ、世界中の人々に親しまれています。エドゥアルド・ディ・カプア(1865 - 1917 )が、ジョヴァンニ・カプッロという人の詩に作曲したこの『オ・ソレ・ミオ(私の太陽)』も、有名なナポレターナのひとつです。
   テノール:福井 敬
 
輝かしい声と情感あふれる演技、幅広い表現力で、いまや日本のオペラ、声楽界を代表するテノールとして最も信頼を集めている。国立音楽大学卒業。同大学院、文化庁オペラ研修所を修了。イタリア留学後、二期会創立40 周年記念『ラ・ボエーム』でデビュー。以来、新国立劇場『ローエングリン』、Bunkamura 『トゥーランドット』など、話題の公演で次々と大役を演じ、絶賛されている。最近では新作オペラ『白鳥』、東京二期会『ラ・ボエーム』などに相次いで主演。常に渾身の演技と質の高い歌唱に賞賛の声が止まない。芸術選奨文部大臣新人賞、出光音楽賞、エクソンモービル音楽賞洋楽部門本賞、ジロー・オペラ賞など多数受賞。二期会会員。
 
   
   ヴェルディ作曲オペラ『椿姫』から「乾杯の歌」
 
北イタリアのミラノで活躍したジュゼッペ・ヴェルディ(1813- 1901 )のオペラも、人間を力強く、情熱的に描くことで知られています。人々からけいべつされるような人、みにくい姿の人であっても、美しい心や、すばらしい知恵があるのだ――そんな人間の「本当のすがた」を描くのが、ヴェルディはとても得意でした。
この『椿姫』は、もともとの題を「ラ・トラヴィアータ(道をはずれた女)」と言います。主人公のヴィオレッタは、楽しければそれでいい、と自分の好きかってな生き方をしていましたが、ある日アルフレードという一人の若者と出会って、人を本当に愛するとはどういうことかを知ることになります。その愛は、はたして彼女を幸せにしてくれるのでしょうか・・・。この歌は、オペラの始まりのはなやかなパーティーで二人が出会う、その場面で歌われます。
   ソプラノ:澤畑恵美
 
国立音楽大学卒業、同大学院修了。文化庁オペラ研修所修了。第58回日本音楽コンクール声楽部門第1位。第21 回ジロー・オペラ賞受賞。文化庁派遣芸術家在外研修員としてミラノへ留学。『フィガロの結婚』のスザンナ役、『椿姫』ヴィオレッタ役ほか数多くのオペラでその魅力を余すところなく発揮している。03年『ばらの騎士』ゾフィー役では名演出家G.クレーマーより最大級の賛辞が寄せられた。最近では三木稔作曲:オペラ『じょうるり』(日本語版日本初演)に主演。コンサートにおいても、G・ベルティーニ、E・インバルなどの著名指揮者や主要オーケストラと数多く共演。気品ある歌唱と華のある舞台姿で、現在最も人気・実力を兼ね備えたソプラノである。二期会会員。
   テノール:福井 敬
 
輝かしい声と情感あふれる演技、幅広い表現力で、いまや日本のオペラ、声楽界を代表するテノールとして最も信頼を集めている。国立音楽大学卒業。同大学院、文化庁オペラ研修所を修了。イタリア留学後、二期会創立40 周年記念『ラ・ボエーム』でデビュー。以来、新国立劇場『ローエングリン』、Bunkamura 『トゥーランドット』など、話題の公演で次々と大役を演じ、絶賛されている。最近では新作オペラ『白鳥』、東京二期会『ラ・ボエーム』などに相次いで主演。常に渾身の演技と質の高い歌唱に賞賛の声が止まない。芸術選奨文部大臣新人賞、出光音楽賞、エクソンモービル音楽賞洋楽部門本賞、ジロー・オペラ賞など多数受賞。二期会会員。
 
   
   ガブリエーリ作曲 第7旋法 第2番
 
ジョヴァンニ・ガブリエーリ(1554 ごろ- 1612 )は、イタリアの水の都、ヴェニス(ヴェネツィア)で活躍した作曲家です。ヴェニスには、サン・マルコ大聖堂という大きな教会があり、彼はそこのオルガニストでした。この教会の建物は、上から見るとちょうど十字架の形をしています。そこでむかしから、その十字架の左右の「手」にあたるところに、それぞれアンサンブルをおいて演奏する習慣がありました。2 つのアンサンブルは、ちょうど「こだま」が響くように、会話したり、追いかけっこをしたりするように演奏します。大きな教会の中いっぱいに響く、不思議な音の世界を体験してみてください。
 
   
   ヴィヴァルディ作曲協奏曲集『四季』から「春」
 
アントニオ・ヴィヴァルディ(1678- 1741 )は、今から300 年くらい前に、やはりヴェニスで活躍していた作曲家です。彼は有名なヴァイオリニストで、右手に持った弓の動きひとつで、自然の景色や、人の心の動きを、自由自在に描くことができました。『四季』は、ヴァイオリンのソロ(独奏)とオーケストラとで演奏する、「協奏曲」という種類の音楽です。この曲では管楽器を使わず、オーケストラも少人数ですが、弦楽器だけでとてもたくさんのことを表現しています。――春がやってきて、うれしそうにさえずっている小鳥たち。やさしく吹くそよ風。泉から流れる小川のせせらぎ。とつぜん空が暗くなり、雷がとどろいて、春の嵐がやってきます。けれどもしばらくすると、また春のうららかな日ざしがもどり、鳥たちの歌声が聴こえてきます。
   ヴァイオリン:大谷康子
 
東京芸術大学、同大学院博士課程修了。全日本学生音楽コンクール全国1位、シェリング来日記念コンクール第2位。1990 年には、ローマ、ウィーン、ベルリン、ケルンでリサイタルを開き、好評を得る。日本各地でのリサイタル、スロヴァキア・フィルなどとの共演の他、海外へ招かれての演奏、テレビ、ラジオなどへの出演、さらに室内楽、現代音楽の分野にも力を入れ、常にその意欲的な活動は多くのファンからの支持を得ている。また病院や各種施設でのボランティア活動にも精力的に取り組んでいる。95 年東京交響楽団コンサートマスターに就任し、現在に至る。99 年のサントリーホール大ホールでのリサイタルは満員の聴衆を魅了した。現在東京音楽大学教授。CD はSONY 「椿姫ファンタジー」他がリリースされている。
 
   
   メンデルスゾーン作曲交響曲 第4番 イ長調『イタリア』から 第4楽章
 
フェリークス・メンデルスゾーン・バルトルディ(1809- 47 )は、200 年ほど前、19 世紀に活躍したドイツの作曲家です。こどものころからもうプロのピアニストとして、ヨーロッパ中あちらこちらを旅しては演奏会を開いていました。たくさんの国に行った中で、いちばん心に残った国はどこですか、とたずねたら、メンデルスゾーンはきっとこう言ったでしょう。それはイタリアです、と。イタリアの青い空や、緑の野山、そしてナポリやローマの町で見たさまざまな祭や儀式のようすが、この交響曲の中にもいきいきと描かれています。第4楽章からは、冬の終わりと春の始まりを告げる祭、「謝肉祭」のわくわくするようなふんいきが伝わってきます。「サルタレッロ」や「タランテッラ」などとよばれる、イタリアの踊りのリズムが使われています。
 
   
   レスピーギ作曲『ローマの祭』から 第4曲「公現祭」
 
オ ットリーノ・レスピーギ(1879- 1936 )は、20 世紀のはじめにローマで活躍した作曲家。彼は、ローマの町の風景を、『ローマの噴水』や『ローマの松』、そしてこの『ローマの祭』などの作品の中にえがいています。こ れは、『ローマの祭』の中の一曲です。イタリアで「ベファーナ」とか「エピファニア」とよばれる「公現祭」はクリスマスのお祭りの一つ。2 週間続くクリスマス・シーズンの最後の日、1 月6日に行なわれます。この日は、赤ちゃんのイエスさまに、東の国からやって来た3 人の博士がおくり物をした日だと言われていますが、イタリアでは、その時いっしょに魔女のお婆さんもやってきてお祝いをしたという言い伝えがあります。ですからイタリアのこどもたちは、12 月25 日ではなく、この日にクリスマス・プレゼントをもらうんですよ!レスピーギの曲から、にぎやかな祭の広場のようすが聴こえてきませんか。
 
   
   音楽の国めぐり(1) ― イタリア
 
電車に乗って、ヨーロッパを旅していると想像してみてください。北の国から、まだ白い雪の残るアルプスをこえ、しだいに南へと、イタリアへと入っていきます。するとどうでしょう。重い灰色の空が、やがて明るい青い色に変わり、黒々とした森が、あざやかな緑の森に変わり、太陽が急に明るくかがやきはじめたように感じるのです。気のせいか、人々もおしゃべりになったように思えてきます。そう、イタリアは、ヨーロッパの中でさいしょに春がおとずれる国です。「あなたはあの国を知っていますか。レモンの花が咲き、緑の葉のかげに金色のオレンジが実る国。青い空からそよ風が吹き、ミルテやぼだいじゅの木がしげるあの国を。その国に、恋人よ、私はあなたといっしょに行きたいのです・・・」――これは、ゲーテというドイツの詩人の書いた有名な詩ですが、北国の人たちのイタリアへのあこがれを、とてもよく表していると思いませんか。イタリアでは、どの町にも古い歴史があり、何百年も前からすばらしい文化が受けつがれてきました。古い建物がたくさんある首都の「ローマ」は、キリスト教のもっとも重要な教会があるところで、たくさんの教会音が生まれました。大きな美術館がある「フィレンツェ」は、昔はお金持ちの商人や貴族がたくさんいて、おおぜいの音楽家たちをやとっていました。はなやかな宮廷音楽の栄えた町です。水にかこまれた町「ヴェニス(ヴェネツィア)」は、大きな教会と劇場があるので、教会音楽とオペラがさかん。陽気な港町「ナポリ」は、歌を愛する人々の町でもあり、オペラだけでなく、数えきれないほどの民謡が歌われてきました。そしてファッション・ショーで知られる「ミラノ」もオペラの町ですが、20世紀には電子音楽のスタジオがいちはやく作られ、現代音楽の中心地にもなりました。そんなイタリアの文化にあこがれて、バッハやモーツァルトやベートーヴェンの時代から、いえそのずっと前から、ヨーロッパ中の、そして世界中の音楽家たちがイタリアにやってきました。そして、きょうのみなさんのように、音楽の香りを胸いっぱいにすって、また世界中へとはばたいていったのです。
 
   
   音楽の国
 
第1回 イタリア編
アントニオ・マルティさん(東京交響楽団 首席トランペット奏者)


オペラ発祥の地、イタリアは、きょうみなさんに聴いていただいた作品をはじめ、たくさんの名曲を生んだ国です。“イタリアも大好き”という、スペイン出身のマルティさんにナヴィゲーターをお願いしました。


――――スペイン・バレンシア出身のマルティさんですが、ユース・オーケストラの演奏旅行でイタリアにいらしたことがあるそうですね?

17 歳のとき、スペイン国立ユース・オーケストラのツアーで、ローマ、ヴェニス、シチリアに行きました。その少し前、15〜16 歳のときには、こどものときから入っていたバンドでトスカーナ地方をまわったこともあります。イタリアもそうですが、スペインでは、カトリック信仰に基づいたバンド音楽の伝統があります。それぞれの街にはかならずバンドがあり、毎週日曜、街や村の幸運を祈って、行進しながら演奏するのです。イタリアとスペインは近いので、お互いにバンドの「交換」もしていました。スペインからイタリアに演奏に行き、お返しにイタリアからスペインに演奏に行く、というわけで、僕がトスカーナに行ったのもその一環でした。バンドは、僕にとって、音楽の「最初の学校」です。音楽好きのこどもは、お父さんが演奏しているバンドに入って音楽を学び、さらに道を究めたいと思ったらコンセルヴァトワールに進んで専門的なレッスンを受けるのです。イタリアでも同じではないでしょうか。僕は当時ユーフォニウムを吹いていた父のバンドに10 歳から入って、トランペットを選びました。

――なぜトランペットを?

小さいときから父の横に座ってバンドの練習を聴いていて、ずっと憧れていたんです。バンドは管楽器ばかり80人近い編成でしたが、そのなかでもトランペットは華やかなソロを受け持つ、重要な役割だったのです。初め、ソルフェージュと小さなトランペットの手ほどきを父から受け、さらに父のバンドのトランペット奏者に習い始めました。最初は音を出すのが大変でしたが、練習は大好きでした。ユース・オーケストラは、Spanish National Youth Orchestra といって、国の教育プログラムに組み込まれています。10代の若者を2 年間オーケストラでトレーニングするシステムで、入るには厳しいオーディションがあります。僕は16 歳から2 年間演奏しました。コンサートにも父と一緒によく行きましたね。「こども定期」とは違うのですが、テネリフェ交響楽団にも「Young Talent Concert 」という若手奏者のためのコンサートがあり、ソリストに選ばれて演奏したこともあります。

――初めてのイタリアはどんな印象でしたか?

「わが家」という感じがしました。言葉も似ているのでなんとなくわかりましたし、知り合った人たちもみな陽気で温かくいい人たちでした。たくさん食べ、飲むのもスペイン人と同じ。電車やバスがいつくるかわからないのも同じ(笑)。人生を楽しんでいる感じがしていいですね。
違いといったら、イタリア人のほうが情熱的で、すべてにおいてちょっと大げさなところかな。だからこそ、あれだけドラマティックなオペラが生まれたのでしょう。僕は歴史が好きなので、バチカンのシスティーナ大聖堂とローマのコロッセオがとても印象的でした。いたるところに歴史の重みを感じて感動しました。観光に行ったヴェニスも、すばらしく美しい、ロマンティックな街ですね。イタリア人が自分たちの歴史に誇りをもち、敬意をはらっているのはすばらしいことだと思います。そして音楽好きであることも。

――イタリア音楽の特徴、魅力についてどう思われますか?
イタリア・オペラのストーリーはドラマティックですよね。フランスやスペインの物語は、なにか出来事が起こって、そのまま続き、さてどうなるでしょう?というところで終わることが多いのですが、イタリアの物語は『トスカ』や『トラヴィアータ』のように、恋におちたり事件が起こったりした後で、最後に誰かが死んでしまうのです(笑)。かならず黒か白かの結論をはっきりさせる。これが“イタリア的”といえるのではないでしょうか。バロック時代、イタリアでは、どれだけ演奏できる能力があるか「誇示するshow off 」ことが大切とされていました。『セビリャの理髪師』のように、たくさんの音、速いパッセージを演奏する曲は、その特徴を受け継いでいると思います。その後、どれだけ情熱的に歌えるか、表現力が重要になり、ドラマティックな作品が書かれるようになったのです。僕の一番好きな曲はヴェルディの『レクイエム』で、曲の冒頭から、実にさまざまな音楽の表現が盛り込まれていることがわかります。エキサイティングで力強く、同時に暗い面(ダークサイド)、悲劇的な部分もあわせもっている、すばらしい作品です。
そしてイタリア音楽には、美しい魅力的なトランペットのソロが多いのが嬉しいですね。また、人生を楽しみ、情熱的で、自然の恵みをいつくしむイタリア人の感情がこめられているように思います。

――最後に、小さいときのことをもう少し聞かせてください。いたずら坊やでしたか、おとなしいこどもでしたか?
どちらかというと従順なこどもでしたね。それは父をとても尊敬していて、父の教えに忠実に従いたいと自分で思っていたからです。学校ではちょっと変わったこどもと思われていたと思います。いつも学校にトランペットを持って行き、休憩時間も友だちとサッカーをしないでトランペットの練習をしていましたから。小さいときは月曜日から金曜日まで週5 日、学校が2 時に終わると1 時間かけてバスでテネリフェに行き、4 時から7 時までソルフェージュ、和声、トランペットとピアノのレッスンをして帰りました。レッスンのない日は、家に帰って夕食まで、地下に特別に作ってもらった練習室にこもって練習していました。一度も部屋を出ないことが多かったので、いつだったか母が、僕が帰ったことに気づかず、「いない、いない」と大騒ぎして警察を呼んでしまったこともあったんですよ。父は普段は優しい人ですが、音楽に関してはとても厳しい人です。けれども、一度として強制することはありませんでした。いつも愛情をもって僕に接し、適切なアドヴァイスをしてくれました。そしてなによりも、自ら30 年近く、1 日も欠かさず演奏し努力する姿を見せてくれたことが大きいです。父は僕のヒーロー。いま僕があるのは、父のおかげです。母はとても優しい人で、いつも支えてくれました。両親を心から尊敬しています。

「オーケストラへの質問」を募集します!

次回公演プログラムから、「オーケストラQ&A」ページで、みなさんからの質問や疑問にお返事をいたします。ホールロビーに置いてある「お手紙回収箱」に入れてください。みなさんからの質問をおまちしています!
   
 
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第17回プログラムノート
 
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