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プログラム・ノート
   
プログラム 2004年12月11日(土)
 
第12回 交響曲って?
モーツァルト:交響曲 第40番ト短調K550から第1楽章
ベートーヴェン:交響曲 第7番イ長調から第4楽章
ドヴォルザーク:交響曲 第9番ホ短調「新世界より」から第1楽章
ヴァイオリン:大沼 遙(小学4年生)/河裾あずさ(中学1年生)/城所素雅(小学4年生)/武田桃子(小学6年生)/宮川恵理子(小学4年生) (五十音順)
チェロ:松本亜優(中学1年生)/三井静(中学1年生)
フルート:新村理々愛(小学4年生)
テ ィンパニ:徳井妃子(中学1年生)
マーラー:交響曲 第2番ハ短調「復活」から第5楽章の終結部
ソプラノ:半田美和子/メゾ・ソプラノ:永井和子
合唱:東響コーラス/合唱指揮:三澤洋史
 
 プログラムノート 有田 栄(音楽学)
   モーツァルト:交響曲 第40番ト短調K550から第1楽章
 
オーストリアの作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-91)が、はじめて交響曲を作曲したのは、8歳のころでした。彼は、それから一生の間に、数十曲の交響曲を書いたと言われています。きょう聴いていただくのは、そのなかでも一番有名な曲。1788 年、モーツァルトが32歳の時に書いた交響曲です。弦楽器が奏でる最初のテーマのメロディーは、昔から「ためいきの音楽」とよばれてきたメロディーです。とちゅうで表情ががらっと変わって出てくる2 番目のテーマは、ヴァイオリンとクラリネット。こうして表情や性格のちがうメロディーを使って、全体を組み立てていく方法は、モーツァルトやハイドンの得意なやりかたでした。それにしても、この曲は一度聴いたら忘れられない、ロマンティックな曲。当時だけでなく、その後19世紀、20世紀になっても、ずっと多くの人々に愛され続けてきました。
 
   
   ベートーヴェン:交響曲 第7番イ長調から第4楽章
 
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)は、全部で9曲の交響曲を書きました。モーツァルトの書いた数と比べると、ずいぶん少ないと思いませんか?それは、モーツァルトやハイドンの時代と、ベートーヴェンの時代とでは、「交響曲」という音楽の持つ意味がちがっていたからなのです。オーケストラを使って「交響曲」を作曲するということは、作曲家にとってとても特別なことでした。ベ ートーヴェンも、交響曲を、自分にとって特別な音楽だと考えていました。彼は、交響曲を自分の「分身(もうひとりの自分)」のように感じていました。神から音楽の才能を与えられた自分が、この世でただ一人の特別な存在であるように、交響曲も、自分にしか作れない、個性的な音楽にしようとしたのです。そこで彼は、一曲一曲、力をふりしぼるようにして作曲し、そのなかで、考えられる限りのいろいろな音楽の実験を行いました。
この曲は1811〜13年ごろに作曲されました。そのころヨーロッパでは、ナポレオンのフランス軍が、あちらこちらで戦争を起こしており、フランス以外の国は、協力してナポレオンと戦っていました。ウィーンにいたベートーヴェンは、「イギリス軍がフランス軍に勝った」というニュースを聞いて、勝利を祝う演奏会をすることに決め、そこでこの交響曲第7番を演奏したのです。聴いていただく第4楽章は、軍隊の行進曲のような、とてもいせいのよい音楽。何度もくりかえされるテーマのメロディーは、弱強・弱強…というリズムに特徴があります。これは、「エコセーズ」とよばれる、イギリスのスコットランドの舞曲をまねたものでしょう。あまりに勢いのある音楽なので、当時は「酒の神バッカスのお祭りのようだ」といわれたそうです。
 
   
   ドヴォルザーク:交響曲 第9番ホ短調「新世界より」から第1楽章
 
アントニーン・ドヴォルザーク(1841-1904)は、19世紀の後半に活躍したチェコの作曲家です。彼は、チェコの首都プラハで、生活のためにさまざまな苦労をしながら、こつこつと作品を書き続け、やがて、ヨーロッパじゅうに知られる作曲家になります。ことに、チェコの歌や踊りの音楽を取り入れた作品は、どこの国でもたいへんな人気がありました。
50歳をすぎるころには、ドヴォルザークの評判はますます高まっていきました。はるばるアメリカからも、彼にぜひ来てほしいという招きがあり、ドヴォルザークは、海をこえてニューヨークにわたります。そこで彼は、アメリカの先住民(もともとアメリカに住んでいた民族)や黒人たちの音楽を知り、強く心をひかれます。また、あちらこちらを旅行して、有名なナイアガラの滝など、アメリカの荒々しい大自然の姿を見て、すっかり心をうばわれてしまいました。ドヴォルザークがそうした経験から得たさまざまな音楽のイメージが、やがて大きくふくらんでゆき、この『交響曲第9番』になったのです。題名の「新世界」とは、アメリカのこと。この曲は、美しいメロディーを持った第2楽章が有名ですが、きょうみなさんに聴いていただくのは第1楽章。ゆっくりとした序奏(曲の初めの部分)に続いて、ホルンが力強く第1のテーマを演奏します。しばらくすると、フルートとオーボエが第2のテーマを。そのほか、曲のなかにちりばめられたたくさんのメロディーは、「黒人霊歌(黒人たちの歌う賛美歌)」のメロディーだとも言われています。
 
   
   マーラー:交響曲 第2番ハ短調「復活」から第5楽章の終結部
 
グスタフ・マーラー(1860-1911)は、現在はチェコになっているボヘミアのカリシュトという町に生まれました。マーラーの家は貧しいユダヤ人の家庭で、彼は少年のころからユダヤ人へのさまざまな差別を経験して育ちました。兄弟たちは、小さいうちにつぎつぎと亡くなってしまい、両親のけんかも絶えませんでした。けれども、彼のまわりにはいつも色々な音楽があったといいます。ボヘミアの森に響く鳥たちの声。村人たちの歌。田舎のバンドが演奏する流行歌やマーチ……。こどものころの彼にとって、悲しみと喜び、つらさと楽しさは、いつもとなりあわせになっていたのです。マーラーの音楽からは、こどものころの彼の心に映っていた、そうした音楽の風景が聴こえてきます。マ ーラーの交響曲は、全部で11曲(未完の第10番と『大地の歌』を含めて)あります。曲は、どれも1曲で1時間以上かかるようなものばかり。オーケストラの人数も、きょう聴いていただく作曲家たちのなかでいちばん多く必要です。さまざまな音色の楽器を使う、大オーケストラの響きを、じっくり楽しんでいただけると思います。
交響曲第2番は、1888〜94年に作曲された作品です。このころ、マーラーは身近な人たちの死を経験し、自分も大きな病気をして苦しんでいました。彼が「死」について考えていたある時、この音楽のイメージが心にうかんできたのだといいます。きょう聴いていただくのは、最後の第5楽章の後半の部分。金管楽器とフルートが、おごそかなふんいきの音楽をかなでたあと、賛美歌のように静かに、合唱が歌い始めます。――「人間よ、おまえは永遠の命を与えられるだろう。おまえが生まれたこと、生きたこと、苦しんだことは、けっして無駄ではない。お前は何も失っていない。おまえがあこがれたもの、愛したもの、求めたものは、すべておまえのものだ。生まれた者は、みなほろびなければならない。だが、ほろびた者は復活し、ふたたび生きるのだ。死は乗りこえられた。私は愛の力に満ちて、このつばさで、神のもとへと舞いあがる……」という内容です。
   ソプラノ:半田美和子
 
桐朋学園大学卒業。同大学研究科修了。二期会オペラスタジオ修了。(最優秀賞、川崎静子賞受賞)。第4回藤沢オペラコンクール第1位。オペラでは二期会『フィガロの結婚』スザンナでデビュー。二期会50周年記念『ファルスタッフ』ナンネッタに抜擢され清冽な歌唱を披露し喝采を浴びた。また新国立劇場小劇場シリーズ『花言葉』で主役ドンナ・ロシータを見事ごとに演じて好評を博し、『地獄のオルフェ』ではユリディスで新境地を拓く。2004年6月新国立劇場『ファルスタッフ』で絶賛を博したことが記憶に新しい。コンサートでは、ガリー・ベルティーニ指揮東京都交響楽団「真夏の夜の夢」で高い評価を得、その後も「千人の交響曲」で共演するなど厚い信頼を寄せられている。その他新星日本交響楽団、東京交響楽団で「カルミナ・ブラーナ」等などのソリストをつとめた。現在各方面からの熱い注目を集めているソプラノである。二期会会員。
   メゾ・ソプラノ:永井和子
 
国立音楽大学卒業。同大学院修了。二期会オペラスタジオ修了。(第1回川崎静子賞受賞)。文化庁オペラ研修所修了。第19回民音コンクール第1位入賞。第1回グローバル東敦子賞、第15回ジロー・オペラ賞受賞。故シノーポリ指揮『蝶々夫人』スズキに抜擢され出演。この成功により海外で活躍。ロンドンではシノーポリの『千人の交響曲』に出演。わが国を代表するメゾ・ソプラノの一人として国際舞台での地位を築いている。国内では『シンデレラ』、『カルメン』タイトルロール、『運命の力』プレツィオシルラ、『神々の黄昏』フロスヒルデ、また新国立劇場開場記念公演『建・TAKERU』、長野オリンピック開催記念『信濃の国・善光寺物語』等の新作オペラにも主役級の役どころで出演し、その存在はもはや欠かせないものとなっている。コンサートでもN 響をはじめ各オーケストラと恒常的に共演。多彩なレパートリーは、貴重な存在として厚い信頼を得えている。二期会会員。
   合唱:東響コーラス
 
東響コーラス「東京交響楽団とともに、より質の高い合唱つきオーケストラ作品のコンサートを行う」ことを目的に、1987年に発足した東京交響楽団直属の混声合唱団。優秀な指導陣のもと公演ごとに出演者を決定するオーディションを行い、バロック音楽から現代音楽までの幅広いレパートリーで高い評価を得ている。
   合唱指揮:三澤洋史
 
国立音楽大学声楽科、ベルリン芸術大学指揮科卒業。〈東京の夏〉音楽祭公演でオペラ指揮者としてデビュー。1999年から毎年バイロイト音楽祭の祝祭合唱団の指導スタッフの一員として招聘されている。2002年ねん、新国立劇場で『ヘンゼルとグレーテル』を指揮。多くの音楽大学で教えてきた。新国立劇場合唱団指揮者。
   
 
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